一人出版社の短文メモ帳

一人出版社 Creative Edge School Books 緊急用(2015年12月12日から開始)

MVPなんてちっぽけな考えは捨てろ

今朝の「今日の一言」で、「一人出版社が、技術やデザインだけに依存せず、思考法を学び「小さく、素早く」実行するワークスタイルを身につけられたのは「リーン(Lean)」と「Harvard Business Review」のおかげ」と書きましたが、2015年は過去の膨大な書籍や文献を掘り起こしてきた一年間でもあったと思います。

このワークは現在も続いています。

リーンについては、2013年末のブログ記事にまとめていますので掲載しておきます。
「ウェブの大海原から読者を探し確実に届ける仕組みと、電子出版専門の出版社をつくる方法」


一人出版社では、リーンの概念を継承・発展させながら、最も適した手法を実践していますが、「真逆の考え方」についても知っておく必要があると思い、著名なキーパーソンで誰かいないか探していたのですが、いらっしゃいました。しかも大物。

知らない人はいないと思いますが、起業家であり投資家のピーター・ティール氏です。
シリコンバレーでは、ペイパル・マフィアのドンと言われていた人物。


ちなみに、なぜ「ペイパル・マフィア」と呼ばれていたかというと、2002年に15億ドルでイーベイに売却した後、ペイパルの初期のメンバーが新たに起業して成功を収めてきたから。

初期メンバーです。

リード・ホフマン(Linkedin)
スティーブ・チェン、チャド・ハーリー、ジョード・カリム(YouTube
デビッド・サックス(Yammer:ヤマー)
ジェレミー・ストップルマン、ラッセル・シモンズ(Yelp:イェルプ)


ピーター・ティールについては、テック系のブログメディアなどで知る程度でしたが、著書の「ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか」(NHK出版)を読み、どのような思考で活動しているかわかりました。

第2章に「バブルの苦い薬」という節があって、リーンについて書かれています。
スタートアップ界の戒律となったリーンに対して、こう述べています。

“むしろ正しいのは、それとは逆の原則だ。”


投資家の瀧本哲史さんも序文で以下のように書いています。

“ティールの主張で最もコアとなる部分は、「リーン・スタートアップ」と呼ばれる今流行りのコンセプトとは真逆である。”


リーン・スタートアップの「必要最小限のプロダクトをリリースし、仮説検証を何度も繰り返しながら、改善していく、最初の計画を遂行するより柔軟性を重視する」という考え方に対して、「しっかり計画しろ!」「大胆に賭けろ!」「MVPなんてちっぽけな考えは捨てろ」という主張。

競争して勝ち抜くのではなく、競合を存在させないほどの圧倒的な「独占」を重視するというスタンスなのです。

エネルギーや人工知能、航空宇宙などの分野で注目されているスタートアップに投資しているティールらしいスケールの大きさを感じますが、ちょっと敷居が高いかな。

「ZERO to ONE」は、革新的なテクノロジーに賭けるピーター・ティールのダイナミズムから「活力」を得ることができ、お薦めの一冊ですが、私の場合は、引き続き(ちまちましてますが)リーンで発展させていこうと思います。


◼︎関連記事:

ビジネスモデルキャンバスを活用して成功した電子出版の例

TwitterFacebook化は止められない

マップ発想法

パソコン教室ではAndroidの専用アプリしか教えない

40代以上が入園者全体の約20%(ディズニーリゾートのデータを読む)

アナログツールで乗り越えてきた一年間

量産が困難な「記事に没頭させる」シングルロングページ

一人出版社では、コンテンツごとにシングルページ、およびシングルロングページを大量に作成しています。

シングルページ自体がサブコンテンツで単独の特集記事になっていたり、ベータテスト用の暫定ページだったり、新しいコンテンツのプロトタイプとして活用するなど、さまざまな目的で作成します。

f:id:designfee:20151215154551j:image

現在、これらのシングルページは、Adobe MuseDreamweaverを使い分けながら、つくっていますが、昨年、注目していたツールがあります。


「ショートハンド(Shorthand)」です。

2013年3月に設立された、ブリスベン(オーストラリア)のスタートアップ(現在はロンドン、シドニーにも拠点があります)。

f:id:designfee:20151215154616j:image

ショートハンドは、ドラッグアンドドロップで、ストーリーテリングベースのシングルロングページを作成できるクラウドサービスを開発し、2013年11月からベータテストをスタート。

新聞社などのメディアに注目され、まず、ガーディアン・オーストラリアの長編記事「England v Australia」でテストが始まり、評価を得た後、BBCESPNなどの大手報道機関に導入されるようになりました。

f:id:designfee:20151215154635j:image

ガーディアン・オーストラリアの長編記事のメイキングストーリー( http://shorthand.com/story/making-england-v-australia/story.html )は、シングルロングページ「Making of England v Australia」にまとめられています。

f:id:designfee:20151215154653j:image


ショートハンドは、読者をストーリーに引き込む没頭型の長文コンテンツに適しており、BBCの「Voices from the mall」やガーディアンの「in the city」など多数のイマーシブ・ジャーナリズム系のコンテンツが作られました。

f:id:designfee:20151215154711j:image

ショートハンドのパーソナル版「イマーシブ(Immersive)」も提供されており、ジャーナリストなどにも利用されています。

f:id:designfee:20151215154727j:image


ただ、この手法は、記事の構成を考えるのが大変なのです。かなり難易度が高い。

ショートハンドでページ作成が楽になっても、スクロール効果で見せていく独特なページネーションと動的な表現を組み合わせ、印象的なシーン構成を考えていく必要があります。


そもそも動的な表現が必要かどうかも含めて。

今まで見てきたイマーシブ・ジャーナリズム系のコンテンツの多くは、視差効果やアニメーションなどが、「読む」行為の妨げになっていて、逆に没頭できないものが多かったので。


ここで失敗すると、記事の内容とは関係なく、たんに読みづらい、見づらいユーザビリティの低いコンテンツになってしまうんですね。

だから、どうしてもインタラクションデザインのプロフェッショナルが参加して、時間をかけて作り込んでいくことになります。


つまり、誰もが簡単に作成できるようなコンテンツではないわけです。

この手法でプロモーションページを作りたがってる企業は意外と多いようで、仕事としては需要過多のようですね。数は少なくても、作成できるチームなりプロダクションが限られていますので。


一人出版社では、デザインパターンの発想で実現できないか試行錯誤し、昨年、「シングルページマガジン( http://design-zero.tv/magazine/01/ )」というシングルロングページの量産を前提とした仕組みをAdobe Museを活用して構築し、プロトタイプをつくりました。

多数のMuseライブラリとウィジェットで構成しています。

f:id:designfee:20151215154750j:image


このシングルページマガジンの仕組みを準備中の「シンクゼロマガジン( http://design-zero.tv/complete/cesb2/webcast03/ )」で試していく予定ですが、視差効果などの過度な動的表現は避けて、図表などの見せ方に力を入れたいと思っています。


◼︎関連記事:

アナログツールで乗り越えてきた一年間

ビジネスモデルキャンバスを活用して成功した電子出版の例

スクロールで気持ちよく読める会話劇スタイル

このアプリ、機能多すぎね

マップ発想法

パソコン教室ではAndroidの専用アプリしか教えない

私は新しいHTMLのタグを提案したいと思います

アナログツールで乗り越えてきた一年間

一人出版社は、デジタルコンテンツ専門ですが、大量のアナログツールを使っています。

f:id:designfee:20151215082905j:image

例えば、長期プロジェクト(シニア出版社構想)では、2020年までの5年間を常に俯瞰できるように、タイムラインシート(通称:バック・トゥ・ザ・フューチャー)をつくり、9月から活用しています。

f:id:designfee:20151215082145j:image

A3サイズでプリントできるPDFです。

f:id:designfee:20151215082257j:image

こちらは、11月から使っているコンテキストズームシート。2020タイムラインのズームアップシートです。

f:id:designfee:20151215082417j:image

ズームシートの目的は進捗のビジュアライズ。先週のシート、もう真っ青な状態になっています。

f:id:designfee:20151215082439j:image

これは、コンテンツごとに必ず作成するヒストリーシート。下図は、「「経験知」を獲得する力・伝える力  リーンとアジャイル、デザイン思考を組み合わせる( http://think-gcdemo.businesscatalyst.com/ )」で作成したヒストリーシート。

f:id:designfee:20151215082556j:image

5回アップデートして、最新版は、A3サイズを横に4枚つなげた大きさになっています。

f:id:designfee:20151215082642j:image

毎週のように、新しいアナログツールのアイデアを出し、試しながら、有効なものだけ残して、アップデートを繰り返すというやり方。

f:id:designfee:20151215082710j:image

企画のプロセス(上位工程)では、欠くことのできない重要な作業になっています。

f:id:designfee:20151215082802j:image


■関連Podcast

2015年の残り3ヵ月を考えるためのツール、通称「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を公開
MP3


■関連記事:

ビジネスモデルキャンバスを活用して成功した電子出版の例

マップ発想法

40代以上が入園者全体の約20%(ディズニーリゾートのデータを読む)

2015年3月期、過去最高の3,138万人のゲストが訪れた東京ディズニーリゾート

2023年までに、5,000億円レベルの投資をしていく方針で、入園者数を恒常的に3,000万人以上とする目標を掲げています。

東京ディズニーリゾートのデータはいつも興味津々で、毎年、参考にさせていただいているのが、オリエンタルランドのアニュアルレポート。

f:id:designfee:20151214224108p:image

オリエンタルランド アニュアルレポート2015
(PDFをダウンロードできます)

f:id:designfee:20151214224129p:image

・ゲスト1人当たり売上高は、10,955円
・平均滞留時間は、9.0時間
・ゲストの約70%が大人(18歳以上)
・40代以上も全体の約20%を占める

など、ゲストプロフィールも公開されています。

それにしても、テーマパークで40代以上の入園者が全体の約20%というのは、すごいな。

高齢化社会を見据えた今後の戦略についても、レポートに書かれていますので、ディズニーのビジネスに興味のある人は、ダウンロードしてみてください。



◼︎関連記事:

「みんなのために」って言うけど、「みんな」ってどういう人たちなの?

小学生でも創造できるイリュージョン

マップ発想法

パソコン教室ではAndroidの専用アプリしか教えない

どうやって、アンヌ隊員を創り出すか

リエーターという生き方






TwitterのFacebook化は止められない

シンクゼロマガジンの記事コンテンツで、2010年のトレンドをあらためて、調べ直していますが、すごい年でしたね。

AppleiPadをリリース、「電子書籍元年」と言われ、教育界隈でも「デジタル教科書元年」、3D元年、ソーシャルメディア元年、ライブストリーミング元年等々。

私の周りでも、Ustreamで(ダダ漏れ)ライブ放送を始める人が続出し、数々のTwittrer文化圏が生まれ、それぞれのトレンドからネット有名人を輩出しました。

電子書籍のテクニカルな情報を検索すると、未だに2010年の記事が上位にくるのですから、いかにこの年の情報発信が多かったか。

その後、SNSの利用者はさらに増えて、流通する情報量も激増、Facebookアルゴリズムでタイムラインを制御し、ユーザーが情報に溺れないように対策を講じてますが、TwitterFacebookと同様にアルゴリズムで情報の露出をコントロールしようと一部のユーザーを対象に実験を始めています。

Twitterの場合は、ユーザーが反発しているので、いつ導入されるかわかりませんが、タイムラインを制御する流れは止められないような気がします。


一人出版社のマイクロブロギングは、時系列が前提で機能していますので、TwitterのタイムラインがFacebookのように操作されてしまうと、あっけなく破綻してしまいます。

そこで、Twitterの仕様が切り替わるまでに、マイクロブロギングを重層的に構築しなおすことにしました。

このブログは緊急用ですが、Xデーは31日なので、それまでは新方式のマイクロブロギングのテストを兼ねています。
具体的に何を試しているかは、シンクゼロマガジンに掲載する予定です。


◼︎関連記事:

私は新しいHTMLのタグを提案したいと思います

このアプリ、機能多すぎね

パソコン教室ではAndroidの専用アプリしか教えない

スクロールで気持ちよく読める会話劇スタイル

リエーターという生き方

厄介なのは、9割「真実」1割「創作」の記事

デザインスクールのデジタルマーケティングの授業で、「アテンションスパン」という用語が出てくるとは思いませんでしたが、今は学生でも知っておくべきことなのでしょう。

アテンションスパンとは、注意持続時間のこと。

マーケティング分野におけるアテンションスパンというのは、目にしたものを把握するまでに要する時間を表すことが多いようです。
人間が認知可能な最も短いアテンションスパンは、9秒と言われています。

SNSで消費されるニュースなどは、「見出し」の重要性が異常なほど高まっているということですが、45年前からそれほど変わっていないとも言えます。


1970年代半ば、週刊誌の発行部数の4〜5割は、首都圏(東京、神奈川県、千葉県、埼玉県)で販売されていました。一億総サラリーマン化と言われていた時代ですね。
その2〜3割は「通勤電車」で読まれていました。

週刊誌の定期購読者(5〜7割)以外は、記事の「見出し」をみて、買っている人たちなので、見出しのインパクトはとても重要だった。

過激で断定的な見出しが増え、センセーショナルな造語がたくさんつくられました。

1970年2月からスタートした週刊ポストの「衝撃の告白」シリーズは、過激な見出しで、発行部数を40万から70万台に伸ばしたそうです。

ただ、東京スポーツのレベルになると、読者を釣るための過激な見出しは、娯楽化し、「ゴルバチョフ暗殺!?」と報じても、「ゴルバチョフが殺されたのは何度目だっけ」などと、そのばかばかしさがエンターテインメントとして許容されるようになっていく。

友人や職場の同僚と、「またゴルバチョフ殺されたよ」「すごいな、東スポ」などと、あれこれ雑談できることが、この記事の「価値」であり、真実ではないことがわかっていても、売れるわけです。

現在のネットニュースも、大袈裟な表現が娯楽性を醸し出しているメディアありますよね。コメントでつっこみたくなることが、ゲーム性でもあり、エンターテインメントになっています。


釣り狙いの見出しは、信頼性を損なう可能性がありますが、その判断はとても難しい。

厄介なのは、9割「真実」1割「創作」の記事です。

記事の1割に満たない「衝撃的な部分」だけ作り話。
これは、なかなか見破れませんので、大半の読者は真実として受けとってしまいます。その解釈が、記事を読んでいない人たちにも伝播していく。

私たちが、多くの人に情報を伝えるとき、難解な言葉を理解しやすい言葉に変換したり、新たな表現を加えることで、記事のクオリティを高めますが、多少やり過ぎてしまうことがあります。

推敲のとき、「あっ、この書き方だと真逆の主張になっちゃうな」「刺激的な記事になるけど、勘違いする人多いな、これは」などと、修正していきますが、演出が「作り話」にならないように注意する必要がありますね。


ちなみに、先日書いた「情報発信の4つのタイプ( http://thinkzero.hateblo.jp/entry/2015/12/12/133116 )」では、マイクロブロギングが9秒以内で消費できる最も短いコンテンツで、イマーシブが2分から15分、プロダクトがじっくり読みこんでもらうコンテンツ群という感じです。

このブログは、マイクロブロギングとイマーシブの中間に位置付けていて、Twitterの10連投くらいを基準にしています。

現在は、AIで最も反応のよい「見出し」を学習しながら、同じ記事を複数の見出しで配信する時代です。
発信した情報を、自分の身内の範囲を超えて、伝播させるのはなかなか大変。

一人出版社では、小さな情報をこまめに配信しながら、時間をかけてイマーシブに引き継いていく、というやり方を実践しています。


◼︎関連記事:

「みんなのために」って言うけど、「みんな」ってどういう人たちなの?

パソコン教室ではAndroidの専用アプリしか教えない

どうやって、アンヌ隊員を創り出すか

情報発信の4つのタイプ「プロダクト」「マイクロブロギング」「イマーシブ」「SNS

このアプリ、機能多すぎね

ビジネスモデルキャンバスを活用して成功した電子出版の例

一人出版社が、頻繁に使っているアナログツールに「ビジネスモデルキャンバス」があります。

ビジネスフレームワーク「BMG(Business Model Generation)」が提供するツールで、オープンソースとして公開されおり、IBMエリクソンなどの企業、カナダ政府、学校機関など、世界中で活用されています。

国内で話題になったのは2013年、書籍が刊行されたり、セミナー、ワークショップなども多数開催されました。

一人出版社の前身となる「チーム制の出版活動」を計画していた2013年に、私が真っ先に導入したのが「リーン」で、その過程で、アッシュ・マウリャの著書「Running Lean」に出会います。

こちらのブログで詳しく書いています。
「ウェブの大海原から読者を探し確実に届ける仕組みと、電子出版専門の出版社をつくる方法」


アッシュ・マウリャ氏は、ビジネスモデルキャンバスをベースにして「リーンキャンバス」を開発、自身のプロジェクトで活用していました。

私も独自のキャンバスを作成し、しばらく使っていましたが、一人出版社になってからはBMGのビジネスモデルキャンバスに戻り、企画するコンテンツごとに活用しています。

下図は、昨年リリースした「Adobe Muse CC 2014ビジネスガイドブック」という電子書籍のキャンバスです。

f:id:designfee:20151214173452j:image

5の「収益の流れ」に、販売収入と訪問ワークショップの受講料の2つの柱が立っていますが、この2本柱によって、「成功」と言える仕事になりました。

電子書籍の読者から、訪問ワークショップの依頼がきたり、逆に訪問ワークショップで教科書として売れたり、相互作用がうまく機能していったのです。

読者と受講者からの意見や要望も同時に聞けるため、素早く追加コンテンツに反映できる。電子書籍は時間を追うごとに補強され、商品としての価値も向上していく。


「こうなったらいいな」というプランを見事に実現できた、一人出版社の実績の一つ。

この成功体験によって、「思い込み」のまま突っ走ることがないように、上位工程で、徹底的にアナログツールを使って仮説検証するようになりました。


◼︎関連記事:

パソコン教室ではAndroidの専用アプリしか教えない

スクロールで気持ちよく読める会話劇スタイル

どうやって、アンヌ隊員を創り出すか

リエーターという生き方

このアプリ、機能多すぎね